(2025年10月30日更新)
1 市の財政状況
令和6年度一般会計決算は、前年度決算と比較して、歳入は国・県支出金やふるさと応援基金寄附金の増加等の影響により23億9,782万円(+6.9%)の増、歳出は東山代小学校・コミュニティセンター等複合施設整備事業や雨水ポンプ場更新事業、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会推進事業等の影響により28億9,994万円(+8.7%)の増となり、実質収支額は7億2,801万円の黒字となった。
歳入の根幹となる市税は、市内企業の設備投資等の影響による固定資産税の増などの影響により、対前年度比で5,299万円の増となり、ふるさと応援基金寄附金については、対前年度比で3億3,539万円の増となった。
財政指標については、普通会計において、財政の弾力化を示す経常収支比率が90.7%(+4.8ポイント)と増加しているが、これは経常的な収入のほとんどが人件費などの経常的な経費に充てられ、政策的な経費に充てられる財源が残っていないことを示しており、政策的事業は基金の取り崩し等で対応せざるを得ない状況となっている。
また、財政の健全度を示す実質公債費比率は7.6%(△0.4ポイント)と減少する結果となったものの、今後は、国見台公園の総合整備や民間保育園の建設に伴う補助金などの普通建設事業に係る多額の地方債発行を予定していることから、今年度以降の実質公債費比率は悪化すると見込んでいる。
また、今後とも人件費や社会保障関連経費などの義務的経費等の増加により、財政の硬直化が進行することが予測されるため、今後はより一層の財政健全化に努める必要がある。
2 予算編成の基本方針
令和8年度の当初予算編成においては、政策事業計画の評価結果を反映するものとする。また、国等の動向や市民ニーズ等には的確に対応することとし、本市の継続的な発展に向けた予算編成を行うものとする。
財政運営の見通しについて、歳入の根幹となる市税は、市内企業の設備投資等の影響による固定資産税等の増が見込まれることから、前年度決算見込と比べて2億5,432万円増の82億1,915万円と推計している。地方交付税については、税収減等に伴う基準財政収入額の減少を考慮し、前年度から2億6,298万円増の61億9,950万円と見込むが、歳入一般財源総額では前年度と比べて8億7,280万円減の171億1,614万円と推計した。
一方、歳出については、人件費や社会保障関連経費などの義務的経費の増加が見込まれるほか、老朽化した各種公共施設の維持補修費、国見台公園の総合整備などの普通建設事業費、さらには人口減少社会に対応した新たな行政課題に要する経費等も必要となることから、歳出一般財源総額を前年度決算見込より12億442万円増の191億9,336万円と推計した。
なお、会計年度任用職員に係る経費について、雇用時間の削減を行うことで義務的経費から約6,900万円を削減して算定している。
しかしながら、歳出の財源は歳入一般財源を充当しても義務的経費と経常的経費しか賄うことができず、政策的経費に充てるべき財源が不足するため、財政調整基金、減債基金、公共施設整備基金、まちづくり基金のみならず、ふるさと応援基金にも多くを依存せざるを得ない状況となっている。
このようなことから、全職員が本市の財政状況を十分に理解した上で、第6次伊万里市総合計画(後期基本計画等)における各種施策の推進に当たり、「住みたいまち」「住みたくなるまち」「住んでよかったまち」などの環境づくりを実現させるため、10年後20年後の未来の伊万里市にとって、真に必要な事業の推進と財政の健全性を両立させるものとする。
具体的な方針は次のとおりとする。
(1)骨格予算の実施
令和8年4月が市長の改選期にあたるため、令和8年度当初予算については、骨格予算として編成する。政策的経費については、継続費及び債務負担行為を設定している事業、特に当初予算において計上を必要としているものを除き計上を留保し、市長改選後に肉付け予算の編成を行うものとする。
骨格予算として当初予算を編成するが、年間の必要経費を把握するため、予め全ての事務事業に係る年間経費について見積もることとし、現行の事務事業を根本から洗い直し、既存の経費の見直しと支出の適正化をもってコストを削減した事業実施を目指すものとする。
見積もる年間経費について、政策的事業は経営会議を経て決定した政策事業計画の評価を基礎とし、経常的事業は前年度現計予算額(令和7年度12月補正後)をベースとして、いずれも実施の必要性を再検討すること。
なお、要求された事業(政策的事業を含む。)は、財政課で査定(歳入状況等を勘案し、経常的経費及び義務的経費のうち一部の費目については調整)を行う。
(2)制度改正等に対する対応
令和8年度の国の予算や地方財政計画等が未確定であるため、主に現行制度を前提とした予算編成とするが、当初予算案の決定までに制度の創設・改正等が明らかとなったものは、可能な限り予算編成に反映させるものとする。
(3)DX・GX推進に対する対応
加速する少子高齢化や人口減少などの様々な課題に加え、国連の持続可能な開発目標であるSDGs、デジタル技術の活用による産業構造の変化を進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)、脱炭素社会を実現するためのグリーントランスフォーメーション(GX)といった新たな時代への対応が求められている。
このような社会経済状況の変化の波を捉え、市民ニーズの時流の変化に対応するため、新たな取組や見直しについて検討すること。
(4)内部努力の徹底
全ての事業について、一層の経費削減に努めること。事業見直しを行う際は、廃止・縮小の影響を十分に考慮し、関係団体等に説明を行うなど、市民の理解を得るよう努めること。
(5)歳入の確保
国・県支出金について、国や県の動向を踏まえた上で、他省庁の補助制度等を含めて積極的に活用し、財源確保に努めること。また、その他収入として各種財団、企業等の新たな助成制度に関して情報収集を行い、活用を検討するとともに、企業版ふるさと納税やガバメントクラウドファンディング等の資金調達手法についても検討すること。
(6)市債発行の抑制
市債の発行は後年度に公債費(長期債元利償還金)の負担増につながり、財政の硬直化を招く要因ともなるため、普通建設事業を計画的に実施することで新規の発行額を抑制するとともに、地方交付税措置がある起債を活用することで、実質公債費比率の逓減に努める。
(7)基金残高の確保
ふるさと応援基金寄附金については、国における制度変更などにより先行きが不透明な状況にあるため、最低限必要な基金残高の維持に向けて取り組むとともに、枯渇が懸念される財政調整基金、減債基金の取崩しの抑制に努める。
(8)財政改革への取組み
本市の財政状況を十分に認識した上で、今後、確実に見込まれる財源不足の解消を図ることはもとより、将来の伊万里市の発展の礎となる安定した財政基盤づくりを目指し、歳入(財源)確保と歳出削減を図るなど、全力を挙げて財政基盤の安定化に取り組む。