(2025年3月6日更新)
令和7年第1回定例会の開会にあたり、市政運営について所信の一端を申し述べますとともに、今議会に提案しました令和7年度当初予算及びその他の議案について、その概要をご説明申し上げます。
はじめに
令和4年4月に、市民の皆様から2期目の市政運営の負託をいただき、早くも任期の最終年度を迎えようとしております。
私は、市長就任以来、まちづくりの原点は「ひとづくり」との確固たる信念のもと、未来の伊万里市を担う子どもたちへの支援に最優先で取り組んでまいりました。
保育料の見直し、ICT教育の推進、公園遊具の整備や学校へのエアコン設置など、子どもたちが安心して学び、希望を持って未来を描ける環境づくりを着実に進めてきたところです。
就任当初、本市は県内で最も厳しい財政状況に直面していましたが、ふるさと納税制度への取組の強化や施設の複合化による効率的な管理運営等により、財政健全化に一定の成果を上げたことで、国見台公園の総合整備等の大型事業にも挑戦できる状況を整えることができました。
今年度は、市制施行70周年の節目であり、また、国民体育大会が姿を変え、48年ぶりにSAGA2024国スポ・全障スポとして開催された年でもありました。
先人たちにより築き上げられた伊万里市の歩みに深い敬意を表し、郷土愛をさらに深めるため、子どもに人気の音楽ユニットによるコンサートなどを開催したほか、ホッケーをはじめとした競技会場の熱気や大歓声を目の当たりにして、市民の心を一つにするスポーツの強い力を改めて実感しました。
私の信条は「課題は現場にある」との揺るぎない思いです。
昨年11月から3か月間にわたり、市内全13地区で「市長と話そう あしたの伊万里」と題した座談会を開催し、市民の皆様の声を直接お聴きしました。
本市の更なる発展に向け、ここで得られた身近なご意見を参考にしながら、2期目の総仕上げとして、強い覚悟と決意を胸に、全力で取り組んでまいります。
市政における現状と課題
能登地方では能登半島地震での大きな被害にさらに追い打ちをかける豪雨災害が発生し、また、全国で記録的な猛暑が続き、年間平均気温は2年連続で過去最高を更新しました。
本市においても11月としては観測史上最大となる異例の大雨が降るなど、近年、自然の脅威は私たちの想像を遥かに超えています。
本市は、地震や津波のリスクが比較的低い地域とされていますが、想定以上の災害にも対応できる防災体制の整備が必要不可欠であり、加えて、酷暑への対応もまた喫緊の課題となっています。
少子化に歯止めがかからない状況も続いています。
全国の出生数は平成28年以降、9年連続で過去最少を更新し、本市においても令和6年の出生数は307人にとどまり、わずか10年間で4割、約200人減少しました。
少子化の大きな要因として、未婚化や晩婚化が挙げられ、特に地方では若年女性の都市部への流出が大きな問題となっていることから、国は地方創生2.0として、若者や女性にも選ばれる地方づくりを第1の柱に掲げています。
先の座談会では、若者の定住策や子育て支援のほか、地域の交通手段の確保や耕作放棄地の増加など、共通の課題から地域特有の課題まで、市民の皆様から多くのご意見をいただきました。
若い世代から選ばれる魅力づくりに加え、早急に取り組むべき課題として、高齢者が住み慣れた場所でいつまでも住み続けたいと思える地域づくりの重要性を改めて認識しました。
本市は、企業の集積により昼間の人口が夜間よりも多い、活気ある働くまちとしての強みを持っていますが、同時に住みたいと感じさせるまちづくりが重要となります。
企業の旺盛な設備投資や雇用拡大が続き、県内最高の有効求人倍率となったこの好機を、このまちに住みたいと思える魅力づくりにつなげていかなければなりません。
市政運営の基本方針
私は、自然動態による人口減少が続く中にあっても、観光客に加え、市外からの通勤者も含めた多くの交流人口を、より結びつきが強い関係人口へと深化させ、更には、定住人口へとつなげる、持続的な成長を目指します。
このため、市民の皆様はもとより、本市に関心を抱く方々をさらに惹きつける、魅力ある伊万里市づくりに、本市が有する力を最大限にいかしてまいります。
まず、何よりも強力に取り組むべき施策は、やはり子育て応援であります。
東山代小学校等複合施設の供用開始や東陵学園の開校のほか、学校トイレの改修や屋内遊び場の整備など、今任期最後の1年を、これまで積み重ねてきた、子どもたちの学びと成長を支える取組が実を結ぶ、集大成の年といたします。
さらに、高校生年代や結婚、出産を望む方への支援を拡充するなど、若者の未来を応援する新たな施策にも力を注いでまいります。
今年は鍋島藩窯伊万里開窯350周年という記念すべき年でもあります。
近世陶磁の至宝と称された鍋島焼の伝統を守り、その価値を次世代にしっかりと受け継ぐ取組を加速させ、最大のターゲットである福岡都市圏への魅力発信を強化することで、本市への誘客を図り、賑わいの創出につなげます。
本市誕生から70年の歳月を経て、新たなステージを迎える本年、私は、次の10年、20年を見据え、更なる成長を遂げるための新たな魅力を生み出し、次代の伊万里市への礎を築く一年にしたいと決意を新たにしています。
魅力あるまちづくりとして、市民会館跡地の整備をはじめとする大型プロジェクトを推進するほか、人口減少下にあっても地域が共助で支え合い、住み慣れた地域で誰もが安心して暮らし続けられる地域づくりに取り組んでまいります。
健全な財政基盤を堅持することは、すべての施策の根幹です。
その上で、次の世代へと力強くつなぐため、本市の活力ある将来像をしっかりと見据え、誰もが自信と誇りを持って、ここに住み、ここで働きたいと心から感じる、魅力あふれる伊万里市づくりに向け、全力を尽くす覚悟であります。
主要な施策
この1年で私が取り組む「いまりSTEP UPプロジェクト」では、これまでの3年間の取組を深化させた2025年版として、5つの都市像の実現に向けた具体的な取組を進めます。
第1に、未来を託す子育て応援都市であります。
子どもたちを施策の中心に据え、子育て・若者成長応援パッケージ3.0として、「支える」、「感じる」、「選ばれる」の3つの柱を組み合わせ展開してまいります。
まず、子どもの成長と子育てを「支える」取組として、順次拡充してきた子どもの医療費助成に高校生年代の通院費等を新たに追加し、すべての子どもの医療費を支援の対象とします。
また、中学3年生等の給食費の無償化や物価高騰の影響を受けた学校と保育施設の給食費への支援を継続するなど、子育て世代の経済的負担の軽減を図るほか、令和4年に民営化したいまり保育園、牧島保育園及び南波多保育園の新施設の整備を支援し、令和7年度中には牧島保育園と南波多保育園の園舎が完成予定となっています。
このほか、働く子育て世代をサポートするため、病児保育を開始する事業者を支援するほか、人材派遣を活用して公立保育園の保育士を確保するなど、安心して子育てができる環境を整えます。
少子化が進む中、結婚や出産への願いを全力で応援するため、婚活に関する会員登録料や結婚新生活へ向けた引越費用等の支援を開始するほか、不妊治療に加え、県内で初めて不妊検査への助成を行います。
次に、若者が伊万里で子育てしたいと「感じる」取組として、市外への進学により一部で定員割れが続く市内高等学校の魅力を高めるため、企業をはじめとする地域全体との連携による新たな学習機会を提供します。
また、小学生がものづくりのまち伊万里の魅力を体感できる市内企業の工場見学を実施するなど、本市ならではの特色ある教育を推進し、本市に愛着を持ち、ここで活躍したいと感じる子どもたちを地域全体で育みます。
AIの活用が学校現場でも広がる中、中学生にロボットやドローンの操作を通じてプログラミングへの関心を高めるほか、情報モラル等の向上につながる学習機会を提供します。
さらに、英語学習に伸びしろがある中学生の検定受験を後押しし、学習意欲を高めることで、子どもたちの夢の実現を力強く支援します。
次に、子育ての場に「選ばれる」取組として、株式会社名村造船所の寄附を活用し、子育て世代待望の、酷暑や雨天時でも安心して遊べる就学前子ども向けの屋内遊び場を市民センター内に整備します。
また、伊万里小学校をはじめとするトイレの洋式化に取り組むほか、開校する東陵学園へのスクールバスの運行や通学路である市道提川・川西線を整備するなど、子どもたちが安全で快適に過ごせる環境づくりを進めます。
東山代小学校では、今年度の卒業生を複合化した新しい校舎で送り出すこととなります。
県内初となるコミュニティセンターと一体となったこの施設は、地域住民の皆様が世代を超えて集い、交流を深める、新たなコミュニティの拠点として生まれ変わります。
さらに、あしたの伊万里市をリードするプロジェクトとして、子どもの遊び場や健康相談、高齢者のサークル活動など、子育て世代を支え、多様な年代の交流拠点となる市民会館跡地への複合施設の整備をはじめ、スポーツ、健康、憩い、防災をテーマに、体育館の建替を中心に更なる 活気を生み出す国見台公園の総合整備に向けた準備を進めるなど、子どもたちの笑顔がはじける新たな魅力を創出し、若い世代が住み、子育てしたいと感じるまちづくりを推進してまいります。
第2に、未来を先取るデジタル都市であります。
デジタル技術を地域課題解決の鍵として、誰もが便利で快適に暮らせる持続可能な社会の実現を目指します。
まず、市民の利便性向上として、コミュニティセンターや体育施設等の予約システムを本格的に運用開始するほか、コミュニティセンター等でeスポーツ体験会を開催し、高齢者の交流促進や認知症予防に加え、子どもたちとの世代を超えた交流の場を創ります。
また、子育て等に悩みを抱える方が、スマートフォン等を利用し気軽に相談できるよう、本市公式LINEを活用した相談体制を整備するほか、地図情報サービスサイト「いまりんマップ」の道路情報を拡充し、閲覧希望者が窓口に訪れることなく、いつでも閲覧できる環境を整えるなど、デジタル技術の更なる活用を進めます。
このほか、子ども、子育て世代、高齢者等の多世代を対象に、市内進出のIT企業と連携し、AIやプログラミング、デジタルアート等に関する講座を開催するなど、本市独自の学びや交流を誰でも気軽に楽しめる 機会を提供してまいります。
第3に、競争に打ち勝つ産業都市であります。
伊万里焼や伊万里牛などの伊万里ブランドの振興、福岡都市圏に向けた更なる観光戦略の展開と合わせ、西九州自動車道の福岡、長崎双方の結節点という利点をいかし、九州西北部の活力創造拠点として更なる活性化を図ります。
ふるさと納税の返礼品としても人気が高い伊万里牛の出荷頭数の維持と子牛の安定供給を図るため、出荷頭数や成績に応じて奨励金を加算するほか、伊万里梨の栽培農家や面積の減少に歯止めをかけ、産地強化を図るため、果樹の改植や機械導入等を支援します。
また、イノシシ等の有害鳥獣による農作物被害の軽減に向けた捕獲報償金の増額をはじめ、農地の大区画化により経営の安定化を図る瀬戸地区の農地の再整備を促進するほか、就農希望者の研修を受け入れるトレーナーを支援するなど、次世代を担う農業者の確保、育成を図ります。
今年、大川内山は佐賀藩の藩窯として開かれ350年を迎えます。
鍋島焼の伝統を次の400周年へとつなぐため、トータルディレクターの招へいや情報発信等を支援し、産地ブランド力の強化促進を図るほか、歴史や魅力の情報発信拠点である伊万里・有田焼伝統産業会館の大規模改修を行い、伝統産業の更なる振興を図ります。
本市は、焼き物のまちとしての高い知名度から、食品を除く産品想起率で全国7位の位置にありますが、このポテンシャルをさらにいかす必要があります。
このため、本市観光の最大のターゲットである福岡都市圏への集中的な魅力発信をさらに強化します。
伊万里ブランドの魅力を伝える福岡ジャック等の食を中心としたイベントを開催するほか、今月末にリニューアルオープンする道の駅 伊万里「伊万里ふるさと村」との連携や多様なチャンネルを活用したSNSによる情報発信など、福岡都市圏での認知度向上や誘客につなげ、伊万里市をよく目にする、耳にする1年にしたいと考えています。
本市の豊かな自然や文化をいかしたグリーンツーリズムを推進するため、高齢化等で減少している農家民宿の実践者を確保し、滞在型観光の強化を図ります。
さらに、伊万里駅周辺の活性化を推進するため、パブリックスペースを有する民間ホテル建設計画に併せて駅前ロータリーを改修するほか、市民会館跡地の複合施設や店舗集積が続く松島エリアなど、市街地の点を線としてつなげ、新たな賑わいを創出することにより、観光客だけでなく、地域住民にとっても魅力を感じるまちへと生まれ変わるよう取り組んでまいります。
第4に、世界に向けた港湾都市であります。
昭和29年、伊万里市の誕生は、伊万里湾の総合開発を進めるためでもありました。
アジア諸国との近接性と平穏で深い水深を持つという強みをいかし、伊万里港の更なる発展を目指します。
まず、ポートセールスやコンテナ助成等を行う佐賀県伊万里港振興会と強力に連携し、コンテナ貨物の取扱量の増加と新規航路の開設を目指します。
浦ノ崎地区の早期開発は本市飛躍の大きな鍵となります。
官民一体で設立した協議会、ウィンドパワープロジェクトによる洋上風力発電関連産業の誘致に向けた研究やフェリー・RO-RO船航路の活用について国や佐賀県と連携して検討を進めながら、伊万里港の将来を見据えた港湾計画の改訂を促進し、新たな産業集積拠点への発展を図ります。
このほか、伊万里ファミリーパークやイマリンビーチ、福田マリーナの一体的な更なる活用を図るため、佐賀県と連携して、民間活力を取り入れた施設整備の可能性調査を実施するなど、海に親しむ公園としての魅力向上に取り組んでまいります。
第5に、SDGs推進都市であります。
私は、成長を続ける魅力ある伊万里市づくりを進めるためには、SDGsの理念でもある誰一人取り残さない、温かい地域づくりの視点が欠かせないと考えています。
昼間の人口が夜間より多く、市外から1万人近くが通勤する本市の特徴をいかすためには、更なる移住・定住の促進が必要です。
引き続き、各種移住支援金の周知をはじめ、市外在住者が本市の実家へ移住する際の住宅改修等を支援するほか、移住体験ツアーの開催やオンライン移住相談窓口の開設、ニーズに合わせた就職支援など、様々な施策を組み合わせ、多くの方が本市の魅力を体感できる機会を創出します。
高等教育機関が限られた本市において、大学生等を中心に賑わいを生み出し関係人口を創出するため、市内でのフィールドワークを支援するほか、地元企業と連携した特産品の開発を促進するなど、若者の視点による地域活性化を図ります。
また、防災体制を強化するため、伊万里・有田消防組合の通信指令センターの県内共同化に向けた取組を支援するほか、消防団員の装備品の拡充により活動環境を整備し、地域の防災力を維持する機能別消防団の導入を検討するなど、誰もが安心して暮らせるまちづくりを進めます。
市民図書館は、7月に開館30周年を迎えます。
図書館誕生に込めた願い、これまで積み重ねてきた伝統を守りながらも、次の30年を見据えた新たな図書館像を構築するため、年間を通した記念事業を開催するほか、環境学習の拠点となるカーボン・ニュートラル・ライブラリーとして、新たな学びの場を創出します。
さらに、脱炭素社会の実現に向け、二酸化炭素の排出の実質ゼロを目指すゼロカーボンシティ宣言を行い、省エネルギーの推進として家庭用LED照明の買替を促進するなど、地球温暖化対策を進めます。
高齢化が進む地域においても、住み慣れた場所で安心して暮らし続けたいとの願いがかなう仕組みづくりが重要です。
買い物や通院支援など、共助で支えるまちづくりを積極的に支援するため、まずは松浦町と山代町をモデル地区として、他地区への展開を図ります。
私は、伊万里市版SDGsを推進し、市民一人ひとりが輝き、住み続けたい、そして訪れたいまちとして、将来世代に引き継いでいくことができる持続可能な伊万里市づくりに向け、市民の皆様とともに、更なる力を注いでまいります。
当初予算編成の考え方
令和7年度の予算編成にあたり、基本的な考え方を申し上げます。
歳入では、給与所得の増加等による市税の堅調な伸びに加え、ふるさと応援寄附金の増収に向けた取組を強化するなど、引き続き財源の確保を図ります。
歳出では、経常的な事業の経費として、子どもの医療費助成等の社会保障費や人件費等の義務的経費のほか、市民センター改修等の建設事業費や西部広域環境組合等への負担金に加え、物価高騰に伴う維持管理費等の増加を見込んでおります。
こうした中でも、政策の中心に掲げる住んで働きたいと感じるまちの実現に向け、財政の健全性を堅持しながら、本市の将来にとって真に必要な 事業を選択し、市民会館跡地の複合施設の整備をはじめとする大型プロジェクトなど、次代の伊万里市の基盤となる魅力ある事業にも積極的に取り組む予算編成といたしました。
この結果、令和7年度の当初予算の規模は、
一般会計342億8,500万円
特別会計147億 781万1千円
企業会計 97億9,357万2千円 としております。
(その他の議案については省略)
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